灯子は高山を便座に座らせ、自分はその横に立った。
(緊張するな〜。バレたら私、どうなるんだろ)
「…あんた名前は」
「南木灯子。一年生担任だけど、あなたの話が仮に本当なら相談に乗ります。高山……下の名前は?」
高山は生徒手帳を出し、灯子に見せた。
「灯夜(トウヤ)…?そっくりな名前だね!」
「静かに!」
「わ!話題フってきたのそっちじゃない!」
灯夜はやけに右腕を抑えていた。
「大丈夫?」
灯夜の腕を見ようと屈んだ時に、トイレに誰か入ってきた。
不意に灯夜は灯子を頭ごと抱き寄せた。
灯子は喋れなくなった。
「今週も良い写真でしたね。お互い」
「やはり高学年は良い肌をしてますな〜」
灯子は信じられない気分になった。
盗撮は本当に行われている。
そして今、灯子は男子生徒に男子トイレで抱かれている。
こんなスリリングな教師生活の幕開けになるとは、灯子自身、信じられなかった。
夜の八時を過ぎて、疲れた体を自宅まで歩かせていた灯子はさらに信じられない光景を目にした。
男子トイレで会って以降、今日一日忘れなかった顔が、自宅アパート前にあった。
「高山くん!…ちょっと!」
動揺のあまり灯子は灯夜を部屋に入れてしまった。