「トニ！やっぱりあなたなのね！パッと見て、そうじゃないかと思ったのよ」
トニの口元に笑みがこぼれ、顔が見るまに明るくなった。
「懐かしいなぁ、どれくらい振りだろうね」
「あら、いつもは『です・ます』調じゃないの？」
「僕が唯一、対等な口をきけるのは、今もリノだけだよ。・・・それより、今日はネタ探しかい？」
「ううん、今日から１週間は、久々の長休み。うーんと羽を伸ばすつもりよ」
「ねぇ、戻ってみない？・・・昔の、恋人同士に」
「・・・良かった」
「えっ・・・？」
「あなたが今、世界を飛び回る腕利きの探偵ってこと、私が知ってないわけがないでしょ」
「それに、あの卒業式から８年だし・・・あなたにはもう、恋人ができたと思ってたの」
トニは、急に口を閉ざしてしまった。
「ごめん、悪く思わないで。私・・・」
トニはいきなり、私の肩に手を置いて抱き寄せた。
「リノ、僕、謝りたい。今まで、そばにいてあげられなくて、ごめん・・・」
「・・・ううん。私こそごめんね。再会したら、急に不安になっちゃって・・・」
「ねぇ、トニ。仕事も軌道にのってるみたいだし、こういう都会に家があっても、おかしくないんじゃないの？」
「もちろん。家はこの近くだよ。ただ、仮の家っていうところかな。仕事柄、１つの場所に長くいることは、そうそうないからね」
「家、行っていい？」
「やっぱり。そう言うと思ったよ」
[2633] 
[0] 
[0]
