トニは照れ隠しなのか、家に着くまで、幾度となく、髪に手ぐしをかけた。
彼は昔から(私が思う限り)、身だしなみに関しては、少し面倒がりなところがあった。
制服と頭の中の整理は得意なくせに、髪にいたっては、学校に来てから手ぐしで直すほどだった。
ただ、その頃すでに、トニに惚れ始めていた私は、手ぐしをかけるなど、トニのちょっとしたしぐさにも、ドキドキしたりしていた。
手ぐしの時の、トニの滑らかな指の動きが頭を離れず、部屋に閉じこもって、宿題も忘れてオ@ニーにふけったこともあった。
「ゆっくりしていって。少ないもてなししか、できないけど」
「ううん、構わないよ。『甘い物』でもね」
「そんな、余計なことまで覚えてなくていいのに・・・まあ、確かに今でもそうなのは事実だけどね」
「トニは甘党で、私は『アイス党』ってとこかしらね」
互いに苦笑いを浮かべ、私は冷蔵庫から、ソフトクリームを出した。
「カップアイス、好きじゃないの?」
「私は昔から、アイスって言ったらソフトクリームなの・・・変わってるとか、言わないでよ?」
「言うわけないよ。君のことには、口出しする気はないさ」
「またまた、お世辞?」
【アイスって言ったらソフトクリームなの】は、もちろん嘘。
私には、さすがにそこまでのこだわりはない。
高校卒業で、トニと別れてから、手紙やメール・電話のやりとりを欠かしたことはなかった。
ある時、件のオ@ニーのことを告白したのが始まりで、電話口で互いにオ@ニーをするようになっていた。
私は、ゆっくりとアイスに舌先を這わせた。
「リノ、早く食べないと溶ける・・・よ・・・ ・・・!」
トニが息を呑んだのを聞き逃さず、私は、更に舌をソフトクリームに絡ませた。
トニの視線を受けつつ、気付かないふりをして、私は妖艶にアイスを食べ続ける。