「マジで寝てんのかよぉ…?俺様の助手席に乗った女子は、みんな『ぎゃーぁ?ぎゃーぁ?』発情した猫みたいにハシャギまくりなのに…?まったく…本当につまんねぇ〜ヤツ?」ブツブツ独語を始める変態伊野宏樹。
「…」(千人切りって、やっぱり本当だったのかぁ?最低ぇー!女の敵ィ〜?)
キィー車が止まった。
(ひぇ〜変態、マジでラブホに入ったのか???)
違った…小さい島の小さい海岸だった。伊野は、車と僕を置き去りにして平日の誰もいない昼間の砂浜をジーパンの後ろポケットに両手を突っ込みスタスタ、勢いよく海に向かって歩いて行った。(おい…伊野!入水自殺でもするつもりか???)と…僕の心配はよそに伊野は、ピッタリ立ち止まるとそのまま砂浜に座り込みマルボロの箱に手をやると一服しはじめるのだった。(アナウンサーなのに…タバコばっかり吸ったら駄目だよ…伊野さん…すごくイイ声してるのに…喉、痛めるよ…)僕も車から降りて伊野の後を追った。それから、声をかけようと思って…僕はやめる…心臓が切なくなってきた。だって伊野は膝を抱えて、声もださず、身動きもせず、ただただ涙を流して…泣いていたから…一体…神戸に何があるんだろう…?