「もう…嫌だよぉ…」
放課後の教室。教育実習生としてこの学校に来ている恭子は、ポツリと呟いた。
実習1日目、クラスで一番目立つ男子に「メアド教えてよ」と付きまとわれた。すると、その男子を気に入っているらしいクラスのリーダー格の女子グループから、嫌がらせされるようになったのだ。
慣れない実習中に、陰湿なイタズラやシカト…普段は和やかな恭子でも、『生徒を誑かす淫乱実習生』と学校中の黒板に名指しされたことは、ショックで耐えきれなかった。
「…先生、どうしたの?」
突然の声に驚いて顔を上げると、受け持ちのクラスの高橋祐介が1人で立っていた。
「…あ!なんでもないの」
ニッコリと笑ったが、細めた目から涙がこぼれた。
「泣くことねぇよ。誰も本気にしてねぇよ、あんなの…」
ぶっきらぼうに言う祐介の優しさが恭子には嬉しい。普段は机に突っ伏して寝ている祐介で、それも恭子を困らせてはいたのだが…こんな言葉を掛けられたら、帳消しになってしまう。
「ありがとう、祐介くん…」
「はい」
祐介から突き出されたタオルを受け取ろうと、手を伸ばした時だった。
「きゃ、あ…っ」