その事実を知った時の、彼女の顔は、今でも忘れられない。
「面倒見の良い彼女がいてうらやましいぜ。お前さんらって、もうベッドの上の関係?」
そういうネタが大好物の中学校からのツレ、真鳶光一(マトビ コウイチ)が朝からつきまとう。
「何がベッドの上だよ」
「まぁそりゃ涼(リョウ)の方が多少、背は高いし、外見もほどほどに良いしな」
「そりゃどうも」
秋野涼(アキノ リョウ)とその彼女、高校では一学年上の針谷涼香(ハリヤ スズカ)が付き合っている事実を知っているのは高校内で、光一だけだ。
それには理由があった。
もちろん二人が付き合っていることをおおやけにしていないのもあるが、一緒に居る姿はどう見ても…
「でもホント¨姉弟¨みたいだな」
「っなわけねーよ」
涼と涼香は仲のよいただの姉弟か、場合によっては兄妹くらいに見えるほど似ていた。
「あんなアネキいたら最高だよな〜。スタイル良いし、こう今どき珍しく和風な…」
「朝っぱらから頭おかしいのか、お前」
「んだよ、今日はまた一段と釣れないな〜」
涼自身、周囲の空気や明らかに自分たちが似ていることも分かってはいた。
だがそんな有りもしないことは涼と涼香には関係ないことだと無視していた。
冷たい態度もそれをグチグチ言われたことに腹が立ったからだ。
学校に着けばそんな事は忘れていた。