「よく食べれるね。味付いてる?」
ココアを啜りながら涼香は涼にたずねた。
涼の家。
今日は両親が出張や社員旅行やらで不在なので二人でゆっくり出来ると、涼が涼香を連れてきたのだ。
「…ん、うまい。砂糖の配分した人は天才だよ、これ」
マグカップを持っていない方の手を挙げ、涼香が答えた。
「え…スズが?……まぁまぁだな、うん」
「そりゃどうも」
クッキーを一口かじり、涼香が微笑んだ。
「この砂糖ね、涼が美味しいって、食べてくれるかなって思いながら配分したんだ。やっぱりちょっと甘いな」
涼は思わず涼香の手を握ってしまった。
「涼?」
「あ‥‥いや、うん、甘いな、甘い。美味しいよ、すごく」
「そ?良かった、嬉しい」
なんで今日はここまで優しいのか。
確かに俗世間ではバレンタインのイベントが間近ではあるが。
優しさのあまりそのまま抱いて、押し倒したくなってしまう。
ここまでしてくれた相手にそのオチは格好悪い。
何かこう、気の利いたことを言わねばと、涼は考えた。
「今日って…涼ひとり?」
「え?ああ、うん」
「そうなんだ…お夕飯は?」
「カレーがあるから飯炊いて食ってろって…」
なんだなんだ?
せっかく恩返ししようと思ってるのに。
どんどん話が違う方に…。
「私作ってあげよっか?」
「は?」
「どうせカレー用のご飯以外作る気無いんでしょ?」
思っていたことが口を突いて出てしまった。
「今日ヤケに優しくないか?」
真顔の涼香。
完全に怒らせた。
顔が紅くなってる。
怒鳴られるぞ。
「わ…………」
くる!
「私たちって…付き合ってもう2年くらい経つよね…」
じりじり責める気か?
「その……そういう……なんて言えば良いのか…キスはしたじゃない…。その…次っていうか…」