一時間後。
服を整えた二人は、どちらもベッドで寝ずに、涼香はソファで横になり、涼は部屋にあったミニ冷蔵庫からお茶を二人分、注いでいた。
「飲みなよ」
涼香の瞳はどこに視点がいっているのか定かではないが、涼は見ていなかった。
「俺…カラダだけとか…そんな軽く、考えてないからさ…なぁスズ。関係は、今まで通り続けないか?」
「…………」
「気ィ悪いのは分かるけど、逃げても解決しない問題だから…俺たち家族なんだし」
「家……族…」
「こういうことは、今夜で終わろう。だけど俺たちまで、終わるって、なんか納得いかない」
「…………わかって…」
お茶を飲みかけた涼は手を止めた。
「わかってよ……私たち…もう…無理だよ」
「どうして」
「言わせないで……」
涼は分からなかった。
涼香が何と葛藤しているか。
「私たち……………私たちまた、同じことをする…」
ソファに顔をうずめ、涼香は泣いた。
涼香は二人が深みにハマればハマるほど、今夜と同じことをしてしまうのが怖くなったのだ。
愛し合う男女が、同じ空間で寝起きする。
自分たちの欲求を制御出来るハズがない。
「スズ………こんなの…こんなのってねぇよ………クソ…!」
その晩、泣き疲れ眠った涼香をベッドに寝かせ、涼はソファで眠った。