「じゃあ真琴さんの好きな人に真琴さんを知ってもらうために私をダシに使うってことですか！？」
「〜〜〜。そういう言い方をされると聞こえが悪いけど」
なんて人なんだろう。
利用したいだけ人を利用する気なのか。
絶対誰にもモテない。
「そういう回りくどいことしてると嫌われますよ！」
椎原真琴、きっと高校でも嫌われてるタイプだ。
こんな事するなんて。
「回りくどいか…。そうだよな、自分のことを知らない相手を好きになったって意味ないよな…」
「別にそういう意味で言ったんじゃ…」
私が真琴に言い返した瞬間、彼の唇が私の唇に触れた。
「………………」
「自分を少しでも知ってくれてる人なら好きになっていいよね」
真琴にビンタをした。
目一杯、力を込めて。
彼の頬は赤くなっていたけれど、目は真剣だった。
「何よ…その目」
「君が好きだ」
「いい加減にして！」
彼のまっすぐな視線が嫌だったので目をそらした。
それでも私を見ているのは分かった。
とにかくこの視線から逃げたかったので、彼の話に乗ることにした。
「分かりました！彼女のフリぐらいしますからこれ以上ヘンな真似しないで！」
「彼女のフリ……分かった」
彼はついさっき出した条件をのんだというのに少し残念がっていた。
この短時間で本気で私を好きになるわけない。
なのに、なんなんだろうこの態度は。
私を軽く見てたハズなのに。
彼は本当は誰が好きなんだろう？
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