お隣の引越しも落ち着いて、ウチも普段の生活に戻った…
その日、私は講義がないので、ちょっと遅寝をした。起きたら家族はみんな出払っていた…
ゴミを出そうと、勝手口に…
…あ…おじさん…
ウチの裏側は、木の茂った山になっている…
おじさんは懐かしそうに裏山を眺めてた…
おじさんは…まだおじさんと呼ぶには可哀相なくらい若々しかった。
裏山を見つめる横顔は、まるで少年みたいで、私はほんの一瞬見とれてしまった…
「あ?おはよ〜」
うわ…目が合った…
「あ…おはようございます」
どぎまぎする私を見て微笑むおじさん…
あ…ッと、なんか言わなきゃおかしいかな…
「あ…仕事お休みですか?」
「ああ、今日は久し振りに一人でゆっくりしてるんだよ。おばちゃんはパート見つけたからね…」
そうか、おばさん働き出したんだ…
「ねえ、りぃ子、前に隠れんぼしたの覚えてる?」
おじさんは山を眺めたままつぶやいた。
裏山の…隠れんぼ…
私は返事をしなかった…
「ここも、まだ昔のままかなあ…」