愛華とジョーが出会ったのは、3年前だった。仕事の帰り道、人だかりを見つけると、大道芸人達が、個々の芸を競いながら会場を盛り上げているのだった。ジョーは、その中の一員で、家族と一緒に旅をしている旅芸人であった。幾度か、ジョーの芸を見ているうちに、彼の芸事に対する真面目さや、ひた向きさに引かれ、いつしか毎日通うようになっていた。そして最後の終演日に愛華は、ジョーから声をかけられた。「いつもありがとうございました。今度関東公演に行きます。よかったら又見に来て下さい。」と…。握手を交わし、一枚のチケットが。愛華は、「えっ?」、不思議そうな顔をした。ジョーは、答えた。「貴女に差し上げます。お代は、いりません。絶対見に来てくださいね」と微笑を見せてくれた。だけど、とても悲しい目をしていた。愛華には、その気持ちが痛い程わかるのだった。なぜなら愛華も、元々は、旅芸人だったのた。