結局昨晩と同じような時間帯に啓一は真由子の待つ新居に帰って来た。
玄関先も電気が点いたまま明るい。
不思議がりながらも啓一はリビングに進むと、ケーキ１ホールが机に置かれており真由子はまた眠っていた。
¨ケイイチ ２５ おめでとう¨
一瞬、何のことなのか啓一には理解出来なかったが直ぐに今日が自分の誕生日であることに気付いた。
ズキッと心臓辺りが鈍く痛んだ。
今の自分に真由子を起こす手はない。
部屋から自分のブランケットを持ってきて真由子にかけてやると、驚いて真由子は起きた。
「…！ごめん、すぐお風呂沸かすから。」
「真由子、本当にごめんな。」
「お仕事忙しいんだよね。仕方無いことだから、大丈夫。」
啓一はどう真由子の相手をしてやればいいのか分からなくなっていた。
啓一は真由子と出会った当初からを湯船に浸かりながら思い返していた。
高校生同士の合コンに、友達の妹というつながりで真由子も来ていた。
高校生の中でおどおどしている真由子を啓一は放っておけなかった。
「まだデートしたことないんだ？」
恥ずかしそうに真由子は頷いた。
他の友達が好い人を見つけていく中、気づくと啓一は真由子にしか話しかけていなかった。
「遊園地か〜！いいよ。真由子ちゃんの好きなとこに今度行こう」
真由子は嬉しさを隠そうと、啓一を見ずに笑った。
その横顔を啓一は今、思い出していた。
風呂から上がると、啓一は真由子に話した。
「今度の土日。必ず休みとるから、真由子の好きなとこ行こう」
真由子は驚いて啓一を見つめ返した。
その後はあの時と同じように照れ隠しに俯いて笑顔になっていた。
「また遊園地か？」
「啓一とまた行けるなんて。びっくりしたよ。でも、嬉しい。」
啓一は少しでも自分の罪を忘れようとしていた。
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