「というわけなの――どうしたらいいかな、チィちゃん」
深刻な顔をして相談に来たレイナを、普通なら無下には断れない――のだが、千里は全身で『断然拒否』していた。
「……レイナ、玄関に鍵かかってなかった?」
「合い鍵、いつもの場所にあったよ」
「……部屋に入る時はノックしようよね」
「うん、ノックしたよ」
「返事を待たずに入ってくるようなのは、“ノックした”と言わないの!」
「あはは、ごめんなさい」
「……最後にひとつ。私は今、どんな恰好してるかな?」
「……全裸。ちなみにチィちゃんのカレシもスッポンポン」
「わかっているなら出てけぇ〜〜っ!――お願いよぉ、親だっていつまでも帰って来ないわけじゃあないんだからぁ」
怒ったり、泣いたりと忙しい千里を見ながら、しかしレイナが帰る気配はない。
「あ〜〜、あのねチィちゃん」
「…なによ」
「チィちゃんのカレシ“えっ?!こんな乱入劇の後でもやるの?”てな顔してるよ」
今まで完全に蚊帳の外に放っておかれたカレシ――武(たける)を‘キッ’と睨む。それは千里なりに、気弱なカレシに‘喝’を入れる仕草だ。