一輝は、菜月との密会を重ねて行く程、菜月にのめり込み溺れてしまった。しかし未だに男女の関係は無い。なぜなら一輝が恐れているのは、決して見返りを求めない菜月に嫌われるのが怖いからだ。一輝も男だ。何度も菜月を抱きたいと思ったが我慢した。菜月も一輝さんなら…。脳裏には奥様の事が…。いつものコースで菜月を送り届けた。伊勢佐木の自宅とは違う元町の分譲マンション街‥。観るからに億に近い高級マンションだ。「亡くなった実母が私の為に残してくれたの…今のお母様は、後妻なの。お互いに気兼ねして…。一度しか言わないからね…819…」菜月は部屋の番号室を教え、いつもと変わりない挨拶で菜月は、一輝を見送った。なんだか胸の奧にポッカリと穴が空いた寂しさと切なさが残る。「一輝さん…」それから数日後、菜月が入浴中にインターホンが鳴った。「一輝です」菜月はビックリした。「えっ!一輝さん?」モニターで確認しオートロックの鍵と玄関ドアーの鍵を開けた。「お邪魔します。」一輝の声がした。「一輝さんごめんなさいね。もう少ししてからお風呂から出るから…何か飲んでて。」菜月の声がした。