自分の部屋のノブへ手をかけた途端、後ろから強く二の腕を掴まれて、気が付けば向かいにある弟のベッドへなげだされていた。
「仁!いきなり何しやがる!!」
「何するって、ナニするんじゃん」
「いい加減にしろよ!昨日もシただろ!」
「しーっ、オニイチャン。あんま大声だすと『おかーさん』に聞こえる」
「………ッ」
ベッドへ押さえつける力強さはびくともしない。
端正なだけに、僅かな表情の変化で優等生にも悪魔にもなる笑み。
櫻井仁は、兄である櫻井理央の首筋へ唇を埋めた。
この4ヶ月ですっかり慣らされた体に火がつくのは早い。
「ぁ……ッ」
理央の背が小さく浮く。
その反応に仁は含み笑いを洩らした。
もともと、理央と仁は再婚同士の連れ子。兄とはいえ2人の年齢はたった半年しか離れていない。
同居を始めてすぐ、兄より頭ひとつ分上背のある弟はこう言った。
『円満な家族を演じてやる。お前が俺のモノになれば』
その意味を理央が理解したのは、その日のよるだった。