「混んでるなぁ…」
毎度のことながら、混んでいる。
委員会がしょっぱなからあった為、他の生徒はラッシュ前に帰れたが二人はいつもの時間になってしまったのだ。
「混んでて嫌になっちゃうね…」
詩織を振り返って、葵はギョッとした。
詩織は車内に入った途端信じられないくらい興奮しているようだ。
陶器のように白い頬は桜色に染まり、黒い大きな瞳はキラキラ眩しいくらいに輝いている。
葵が呆気に取られていると、さっと葵の手を引き寄せ降り口の角へと招いた。
「どうしたの?」
詩織はハッと葵を振り返り小さく首を振った。
「ここなら苦しくないでしょう?多少ゆとりがあるもの」
そういう声もなんだか上擦っているみたいで不自然だ。
なんだか訳がわからないまま、葵は黙って行き過ぎる景色を見ていた。
……………??
5分くらい経った時、葵はお尻に違和感を感じた…なんか痛い!
手を後ろに廻すと硬い鞄が当たっている。
イライラしながらそれをずらし、後ろのサラリーマンに迷惑だとアピールする……が、男は気付かないのか鞄をどけてはくれない。
仕方なく葵はまた景色に目をやっていた。
が、スカートの上から今度は人肌の暖かさが伝わり、さすがに葵もこれが意図的な「痴漢」だと気付いた。
(ちょっと…やめてよ)
家まではまだまだある。手を払いのけようとお尻に持っていくと、痴漢の手が素早くその手を掴んだ。
「きゃ…」
大胆不敵な力に、恐怖感が沸き上がる。
男は勢いづいたのか、ゆっくりゆっくりスカートを持ち上げ、葵の綴じ合わせたフトモモを指で摩り上げた。
(気持ち悪い!)
指の柔らかさや、男の背後から漂う息遣い…何もかもが気持ち悪く、こんな目にあっているのが恥ずかしい。
葵は隣にいる詩織に目で合図を送ろうと見上げたが、詩織は何か、一心不乱に景色を凝視していて気付きもしない。
(やめてよ〜っ!図々しいっ…)
男は抵抗しない葵に満足したらしく、その手を一旦スカートから外すと、ブレザーの下に手を素早くツッコミ、たくしこまれたブラウスを引きずりだした。
そして有無を言わさない動作で隙間から直に背中に触れてくる。
「やっ…」
(信じられない!)
驚きながらも身体を揺すってみるが何の抵抗にもならない。
(イヤッ…)
ついに男は腕を回し入れると、ふっくらした胸を柔らかく包みこんだ…