次の日。
俺は、学校に行くふりをして、虎太郎の故郷に向かう電車に乗った。
昔…俺が10歳の時、祖母が亡くなって、一度だけ、行った事があった。
それっきりだ。
虎太郎の故郷は、田んぼと畑に囲まれた田舎で。
実家は、10年ぐらい前まで旅館経営をしていたのだが、継ぐ人が居ないという理由で、旅館を畳んだそうだ。
今は、祖父が1人暮らしをしている。
「おじいちゃん…俺…彗だけど…」
駅に着いて、祖父に電話すると、祖父は駅まで迎えに来てくれた。
「彗。久しぶりだね」
きゅうに来た孫に、祖父は、嬉しそうに笑った。
笑顔が、虎太郎に似てて、俺は久しぶりの再会にも関わらず、すぐに祖父と打ち解けた。
祖父の運転する車で、家に向かう。
「虎太郎と、何かあったのか?」
前を向いたまま、祖父が尋ねて来た。
ここに何か手掛かりがあると思って、俺はここに来た。
「おじいちゃん…俺は、誰の子?」
車が止まる。
信号に、ひっかかった。 祖父が、俺を見た。
目が合うと、優しく笑った。
「うちで、話してあげるよ」
家に着くと、祖父は俺を仏間へと案内してくれた。 3つの遺影がある。
1つは、祖母だ。
後は、虎太郎によく似た男の人と、優しく笑う女の人。