ヒカリは気晴らしに屋上に行こうと提案した。
「今日は天気も良いし、昼休みはばぁーっと屋上……で。」
手を広げたまま、先に階段を上っていたヒカリが停止した。
「あ?どうした………。」
屋上のドアに背をもたれて、
橋那利葉が座ったまま眠っていた。
顔には涙の筋が残っていた。
「どー…。どうしよ。」
「い、いや…。こんな経験ねェよ。」
長政は妙に綺麗に見えた利葉の顔に、見入っていた。
「私だって無いよ……!…だってこのままってワケには…。」
その時不意に、微かに声が漏れた。
「…ん…んん……。」
二人が利葉の方に顔を向けると、目をこすりながら利葉がこちらを見ていた。
「……!!っ…ごめんなさい、こんなトコ……。」
「い、いえ!私たちも、その、たまたま!ね、長政!」
「そう、そうなんです、てか、先生に呼ばれて俺たち…。」
「え………ああ、そうね、確かに呼びました。それじゃあ村井長政くんと、坪内ヒカリさんね?」
二人は頷いた。
涙のあとが消えると、通常通り、厳しい目つきの先生に逆戻りした。
「今日は学級委員の顔と名前を確実に一致させておかなくてはと思い、呼び出しました。ごめんなさい、確認が出来れば十分ですから。」