「全部、聞いたよ。虎太郎が責任感じて、俺を引き取ったんだとしても、それでも良い。俺は、虎太郎とこうしてるのが、幸せだよ」「やめろ!」
虎太郎は、体を起こすと、頭を抱えた。
「俺は、最低な奴なんだよ」
虎太郎が、泣いていた。 肩を震わせて。
こんな、虎太郎を見たのは、初めてだ。
俺は、虎太郎を抱き締める。
「どうして?血の繋がりのない俺を、育ててくれたじゃん」
「俺は、佳英が好きだった」
虎太郎が話し出した昔話は、耳を塞ぎたくなるほど悲しくて、辛い片思いだった。
「部活から帰ったら、家の前に、佳英が倒れてて、家の中に運んだんだ。凄く、綺麗な人だと思った。次の日、俺は朝練で早く出掛けるから、佳英の事を旅館の手伝いしてた兄貴に頼んだんだ。気が付いた佳英は、身の回りを世話してくれいる兄貴が、助けてくれたと思ったようだ。急速に、2人の仲は、近付いていった。結婚が決まって、幸せそうに笑う2人が腹立たしかった。それでも旅行をプレゼントしたのは、2人の事が好きだったから。俺は、身を引いて、2人の幸せを願ったんだ。彗を引き取ったのは、佳英によく似てたから。次こそ俺が、佳英を助けるんだ。そんな気持ちで育ててた」