「モタモタしてっからだよ〜。」
3人が帰ろうと校舎を出ると、外はどしゃ降りの雨だった。
「ん。傘。」
吉城は自分の傘をヒカリに渡した。
「俺家の方向あっちだから。せいぜい仲良く相合い傘してろよ。」
冷やかしもほどほどに吉城は走って帰って行った。
「オイ、吉城!!」
「ヘンなの…。」
「っ…。」
「今舌打ちした。」
「違う。あのバカが勘違いしてるからだよ。」
長政が傘を広げ、体の小さなヒカリは十分傘に入れた。
「勘違い?」
「俺たちのこと、そういう風に見てるから。」
「……………長政も吉城も、冷たいよ。」
「え?」
「私のこと、坪内とか、委員長とかって。あの時の関係じゃなくっても、もう私たち友達でしょ。私のこと、ちゃんと名前で呼んでよ。そういうとこ、鈍感ていうか」
「ヒカリ。」
「っえ………うん。」
「呼んだって、俺たちの関係は変わんないよ。ずっと友達のままだ。」
「二人が居なかったら、私立ち直れなかった。ありがとう、長政。ね、長政のウチ行って良い?久しぶりに長政の肉じゃが食べたい!」
こんな時長政は混乱してしまう。
ヒカリと自分、
自分と吉城、
吉城とヒカリ。
ヒカリに対する恋愛感情は長政には少なからずあった。
しかしそれは吉城も同じだった。
ヒカリを最初に見つけたのが吉城だったら。
長政は自分と吉城の立場を時たま入れ替えてしまうことがよくあった。