「おいしい〜!」
「お前な、人ん家の肉じゃがを晩メシにしてんじゃねェよ。」
長政はヒカリに勢いで手を出すのはあの日が最後だと心に決めてあった。
これ以上一緒にいるとどうなるか分からなくなってしまう。
「そうだ、お前あれだ、吉城の家ならもっとウマイもんが食えるぞ。アイツ料理は本当に美味いからな。」
「なんだ、私だけじゃない、料理出来ないの…。」
「しろよ、料理。」
「うん。…長政?」
「なに。」
「好き。」
「え?」
「私、長政のことが好き。」
「…………。」
「ねぇ。これで何回目?」
「ダメなモンはダメだから。」
ヒカリが差し出したおかわりの器に、肉じゃがを盛る長政の手が震える。
「吉城が私のことを好きなのは知ってるよ。でも…私は長政が好きなの…。」
「俺、お前らと一緒にいれればそれでいいから…。」
「吉城が可哀想だよ。こういうことはハッキリし…」
「もういい加減にしろよ!!!」
ヒカリが箸を取り落とした。
「お前と…もし付き合っても…。今とどう変わんだよ。いいじゃねぇかよ。このままで。」
「怖いの…。吉城にいつか本当の気持ちを打ち明けられたら、断る自信がない。」
「っ…知るかよ…。…あの新任教師のことだって一番に気がついたのアイツだぜ。お前を守れんのアイツしかいねぇから。」
「守ってもらおうなんて…」
「心配なんだよ!!」
「長政…。」
「めちゃくちゃ心配なんだよ…!高一の女の子が、あんな大人にレイプされてるとこ目撃して、助けらんなくて。本当に怖かったのはヒカリなのに…お前見てると、そういう弱い自分思い出すんだよ!またお前を目の前で……もうあんなの嫌なんだよ。」
「長政のせいじゃない。長政は何にも悪くない。」
「…………帰ってくれ…送るから。」