「大丈夫だよ。ゆっくり寝たらスッキリした。」
涼子は、雨降りでもあるし、夫を気遣ったが、仕度を始めた彼にそれ以上何も言わず、送り出すことにした…
暗い雨空の下、駅にはひときわ明るい色白の少女…
「あら?お父さん?」
「なんだ、ずぶ濡れじゃないか、傘は?」
「友達に貸してあげた。彼女遠いから」
優しい子だ
助手席に乗るのを確認して、車は動いた。
「映画面白かったよ〜」
真弓は粗筋やなんやかや話しながら、濡れた髪の毛をとかしている。
「それにしても早かったんだな。映画だけか?」
「う〜ん…何となく…」
気分が乗らなかったかのようだった。
「そうか…」
「お父さんは今日もごろ寝だったの?」
からかう笑顔…
「今日はお父さんずっと部屋で寝てたよ」
「…どうして…?」
「う〜ん…何となく…だよ」
「真似し」
「ハハ…」
信号待ちで沈黙…
「寒くないか?」
「うん…」
また沈黙…
「お母さんが来ると思ってた…」
「お母さんがよかったか?」
真弓はいたずらっぽい笑顔を見せるだけ…