「私まだお昼食べてないんだ。」
「じゃ早く帰ろう」
「え〜、なんかお店で食べたい〜」
真弓はよくこんなことを言った。
そんな贅沢ダメダメ…
いつもなら即座に却下だ。
「口止め料なら渡したはずだぞ」
二人は何となく笑う…
孝行は時間を見た。
一時半…
食事の後片付けの途中で電話が鳴った。
「あら、あなた」
「真弓のヤツ、昼ご飯まだらしいんだが…」
孝行は助手席の真弓を一瞥した。真弓は期待しながらニヤニヤしてる…
「またおねだりだ。」
「仕方ない子ね。早く帰って来ればいいのに」
「まあ今日は他にも寄りたいらしいから、…夕方までには帰る」
夕方…?
涼子は少し不思議に思ったが、真弓ならありそうなこと…
ただ、夫は、涼子と裕之のことを忘れてしまったんだろうか…
「そう…あまり遅くならないようにしてね」
「あぁ、わかってるよ」
携帯を切る父親を見ている真弓も思った。
食事をしたとしても、「夕方までには」なんて…
「今日は部屋にこもらないのね」
テレビも着けずにリビングにいる裕之は不自然だ…