夜中に物音が気になり目が覚めた。リビングに降りると、放送を終了したテレビ画面が映し出されていた。
結はパジャマに着替えて、ソファにもたれて眠っていた。
起こすのは可哀想なので部屋からブランケットを持ってこようと思い、戻ろうとした。
「兄(ニイ)……?」
「ごめん。…寝てて良いよ。」
「私も、ごめん。」
「良いよ。」
「私、部屋で寝る。」
起きようとしたが、結は寝ぼけて転びかけた。
「あっ。」
「っと、危ね。」
思わず結を抱く姿勢になってしまった。
「………ふふ、なんかのドラマみたい。」
笑った顔を見て、衝動的に抱きしめてしまった。
「?……優兄(ニイ)、離して?」
「なんで、芸能人なんだ。お前は普通に暮らしてくれれば、それだけで良かったのに。」
「ねぇ。離して?」
「お前を妬んでるヤツがやったんだろ?」
結は黙った。
恐らく顔見知りにやられたのだろう。
「お前はなんにも悪くない…。」
「私、明日早いから寝るね。」
結を離したが、つないでいた指が解けるまでに時があった。
「…無理すんなよ。」
「うん。おやすみなさい。」
彼女の手は、ひどく冷たかった。