孝行はひと唾飲み込んでから続けた…
「父さんは…母さんを心から愛してる…それはわかってくれ…」
涼子はよくわかっている。自分もそうだ。
「真弓のことは…どうなの?」
聞いてみたかった。
どう答えるのか…
「真弓は…」
真弓も父親の言葉を待っていた…
「可愛い娘だ。可愛くて…たまらない娘だ…それも本当だよ…」
しばらく沈黙が流れた。
「さっき父さんは…」
裕之が口を開いた。
「避妊だけはちゃんとしろって言ったよね…」
涼子は夫を見た。
複雑な思いが駆け巡る。
「許してくれたんだ…よね?」
まただ…
「そんなこと…答えられるわけないだろ?…ダメだと言ったって、お前…」
避妊…
真弓には生々しい言葉だった。
つまり、目の前の兄の性器が、目の前の母の性器と結合すると言う意味だ…
「結局…」
今度は真弓が始めた…
「元に戻るのは…」
無理だ…
みんなが心の中で思った…
さして何の結論も出なかったが、四人は少しだけ気持ちの負担が軽くなった。
昼食は静かだったが、居心地の悪さはなかった。