「本当に…?」
今度は伊織が驚いた。
からかっていると思っているのだろうか?
「本当よ。清香が好きなの。…友達として、じゃないわ。私の…初恋」
そうよ、清香…辛い毎日のなか、貴女に対する想いは唯一の聖域。
「同級生のなかでも貴女は凄く人気があって輝いてて。最初は憧れていたの。でも貴女が私に優しくしてくれる度に…友情というのとは違う感情が芽生えてきて…もう嘘はつけない。私、好き。清香が…大好き」
「伊織、あたし…」
拒絶される、と身を竦めたとき、伊織は清香に抱きすくめられていた。
自分に負けないくらい心臓の音がはね上がっているのが解る。
一気に、伊織の体温が上昇した。
味わったことのないときめきに息が詰まる。
綺麗な切れ長の瞳に見下ろされ、伊織は静かに清香を見上げた。
穢れない、清香の唇。
圧倒されるような欲望が全身を貫いた。
もしも…穢れのない清香に愛されたら…生きる意味が持てるだろうか…?
考えるより早く、伊織は踵を浮かせて唇に唇を重ねていた。
静かな空気のように軽く触れたあと、清香は真っ赤になって見下ろしていた。
「伊織、あたしも気になってたの。始めはやっぱり憧れで…あんたみたいに綺麗な子、みたことなくて。あたし男みたいにガサツだから。
あたしにないもの全部持ってるじゃない?
でも仲良くなるうちに…凄く可愛く思えて、悩みがあるなら力になってあげたく」
上擦った言葉は途中で塞がれた。
伊織は細い腕を清香に絡みつかせ今度は激しく唇を奪っていた。
(なんでも持ってるのは貴女の方なのよ…)
張り裂けそうな切なさを振り切るように、伊織は清香にのめり込んで行った…。