武瑠は何度も伊織を抱き、その度に伊織に夢中になっていった。
伊織には男心をくすぐる天性の才能があった。
娼婦並みのテクニックを備えていながら羞じらいも忘れない。
大人の持つ色気と少女のみずみずしさが混在しているのだ。
行為を終えた武瑠の腕を枕にし、安心しきった様子で寝息をたてている伊織。
見れば見るほど人形のように美しく、だが血の通った暖かさが伝わってくる。
武瑠は起こさぬように優しく、伊織を抱き締めた…薄く目を開けた伊織が微笑み、「お義兄さま」と呟く。
その時、今まで感じたことのない、激しい独占欲が沸いた。
伊織は俺の、俺だけのものだ。
だが、老獪で恐ろしく頭の切れる親父に、今の自分では太刀打ち出来ない。
これからもいいように抱かれる伊織を指をくわえて見ているしかないのか…?
「お義兄さま、変なこと考えては嫌よ。お義父さまはとても怖い方だもの…伊織、今日のこと忘れない」
武瑠は扇のように広がった黒髪にキスし、心配するなと言った。
「大丈夫、俺が…いつか自由にしてやる」
伊織は微笑んだ。
これでこそ、抱かれた甲斐があるというもの。