笑子は夕日が眩しい橋上を歩きながら、少年を冷やかした。
「バカだなぁ。焦って遊園地で告ることないのに…。今日一日、私独り占めなんだよ?」
「なんで?夜には帰らなきゃ…」
「ん〜ん」
少年の手を引っ張って、笑子は少年の胸に頭をもたげた。
笑子は泣いていた。
「笑子?」
「お父さんとお母さん、離婚しちゃった…。私、迷惑にならないようにって……一人暮らしするって言ったら……お母さんに…直ぐに出てけって………なんで?私ばっかり!なんでよぉ!」
力無く胸を叩き続ける笑子を、少年はきつく抱き締めた。
「知らない人に…!!あんなことされて!!私!初めてだったの!あんなの!!うわぁああ!!」
笑子はボロボロだった。
「笑子さん可哀想過ぎるよ…」
「うん。聞けば笑子の治療費をどっちが持つかで離婚協議が中断してただけだったんだって…。退院したら後は…」
笑子は少年の家に住むようになった。
少年は故郷から遠く離れ一人暮らしの身。
笑子は新婚さんみたいだと喜んでいた。
「毎日大好きな人といれるって、幸せなんだね」
「笑子はもし家族が増えるとしたら何人がいい?」
「もしかしてエッチしようって回りくどく誘ってる?…冗談だって!ん〜と、五人!すっごい賑やかな家族がいい!」
少年も笑子も、幸せだった。
しかし、ゆっくりと確実に、二人の終わりが近づいていた。