「ぅわ〜〜先生。…これ、青?…紺碧の碧?紺色…ですか」静かなギャラリーに優の声が響く。何人かが振り返る…。
そうだ。切なくなる程のブルーなのだ。ブルーの使い方、それがシャガールだ。誰も真似は出来ない。優はそれに気付いてくれた。
私も背は低い方ではないが、片腕にしがみつく優の乳房を感じる。(こんなに背は高かったか) 硬派を自認する私は少々顔が赤らむ。
優はハッと気付いたように離れると無言で鑑賞して行く…。 ハンカチ?泣いて?いる優?。
隣接の喫茶店で…………「どうだ、優。感動したか?シャガール。」
「はい。先生、上手く言えませんが、素晴らしかったです。体が震えると言うか。私絵を見て、こんな気持ち初めてです」
「それにしても、泣くことはないだろ」
「自然に…ホントに自然に涙が流れるもん」
感性が磨かれていく優を見た。
優は某女子体育大学に入学が決まっていた。
体育館で後輩達に混じって自主練習をする姿も見られた。
硬派と言っても私は 23才の新卒新任教諭である。
レオタード姿の優にはゾクッとさせられる。
細すぎもしないスラリと伸びた脚。レオタードで締められても胸はツンと突き出ていて…目を背けざるを得ない。しかし、それはまだ男を知らない処女のものだった。
優が卒業も近づいた日、
「先生、お世話になりました。卒業します。帰った時は遊びに来ます。…これ最後に書きました」
「おう。お前の大学にも俺の先輩がいるから言っとく。困ったことがあったらな。電話くれ」……ノートを置き帰って行く
「……お別れまでに…コーヒー奢って下さい。」と書かれてあった。
「いいとも、だ。コーヒー位なら、いくらでも」 と赤ペンで書いた。
優がこの日、と指定した日曜日。車で出かけた。「何処がいい?何処でもいいぞ、最後だから…」
「海。海の見える道、ないですか?」
「海か…いいな。」私はハンドルを切った。
左手に海が見えて来た。
が、優は真っ直ぐ前を見つめている。
「おい優、海、海だぞ」
「……先生。セックス、私とセックスを…して下さい。私はまだ…経験ありません…」
思いもしない優の言葉に車を停めた。