狭い試着室。
見上げる女、見下ろす私互いの目線の中心に私の股間の膨らみ…。
女の善意を踏みにじる私の企みだった…。
正確には私は女の目線を追っていた。
女の目線は最初に私のスパッツの膨らみに行き、次に私の顔に来て…再度スパッツに戻って、足元のズボンに…そこにズボンを引き上げようとする私の手が重なる。この間、3秒もあっただろうか
うえから見えていた女のうなじがみるみる紅潮して行った。
「ごめんなさい。失礼しました」
元通りにズボンをウエストのフックを止め、ファスナーを引き上げた。
女は何事もなかったようにズボンの裾を調整してくれる…。が首の辺りの赤みはまだ消えてない。私の目を見ないように腰から裾までを二、三度目線で往復させて
「これで…いいと思います…ピンクのシャツに……合うわ…きっと…」
私はズボン二本、シャツ二枚を持ち
「ありがとう。何かお礼します。チョッと…こちらに…」
女にウムを言わせず、レディースコーナーに連れて行った。
女に着せたい黒のパンタロンパンツを選び、
「奥さん、お礼にプレゼントします。これ穿いて下さい」
「いいえ、困ります。そんな…たいしたこと…してませんわ…」
固辞するすることは想定の範囲。
「どうぞ。遠慮なく…会社経費で…落とせます。いや〜助かりました。」
「えぇ?…でも、いいのかなあ…こんな高い物」
私はそれも一緒に持ちレジへ向かった。
「あっ。でもウエストのサイズが…」
後方から女がいう。
「53センチです奥さん」
私は後ろを見ずに言った
「えっ!なんで判るんですか?…私の…サイズ」
前を向いたまま私は一先ず安堵の息を吐いた。
レジで支払いを済ませ、裾上げ縫製を聞くと女物と計ズボン三本で一時間後に仕上がると言う。
女店員が女を試着室へ案内していった。
「どうでした?長さは」
戻って来た女に尋ねた。
「ええ、少し。」
親指と人差し指で 2センチ程の隙間を示し首を竦めてみせた。
道路の対面にあるレストランで裾上げを待つことにした。
「試着室では醜態を演じて…失礼しました」
女に思い出させるために敢えて…言った。