「こんにちは!宅配便デス!」 約束の水曜日。
13:00 ジャストだ。
「ハ〜イ。ご苦労様」私は隣近所に聞こえる大きな声で玄関を開けた。
タカシ君が殆どの荷物を両手に抱えている。
ミナミさんは大きな段ボール箱を積んだキャスターを押して、辺りに気を配っている様子だ。
二人は素早く玄関に入ると、ガチャリとドアをロックして「ふ〜」とどちらともなく大きな息を吐いた。「ご苦労様」改めて私が言うと「こちらこ
そ」とミナミさんは言いながら段ボール箱のフタを開けた。中から優しい目をした犬が顔を覗かせた「まあ、可愛い」子供のいない私は犬が大好き
なのだ。会社の社員住宅
であるため飼えないのだ
「隣ん家の犬なんです。私が飼ってるようなもんで…メスで大人しいもんです」私が頭を撫でると
喜んで箱から出してとミナミさんにねだる。ミナミさんは馴れた手つきで犬の脇を掴むと立ち上がらせ箱から出してやる。
犬はブルブルと二、三回
体を震わせミナミさんの横に座った。長い舌を出し息をしている。私はその時、犬の舌がこれほど卑猥に見えたことはなかった。私も震えた…。
「ホントに大人しいわね…名前は」「ラブでいいです。屋外犬ですから、無断で部屋には上がらないんです。美容室でボディ洗いしたばかりです」
「ラブ、おいで。行儀もいいのね」私が手招きすると上には上がらず私に近ずきペロペロと手を舐める。二人が居間の準備をするために姿を消すと
ラブは不安そうにミナミさんの後ろ姿を目で追う
私は小さな声で「ラブ、今日は宜しくね…優しくしてね…お願いよ」玄関に座り頭を撫でるとラブ
は激しく私の手を舐め、私にのしかかるように顔を舐めさせろとじゃれつく。「判ったわ、仲良くなれそうね」ラブは私の口から鼻から舐めようと
する。長い舌で…。私が立ち上がって居間に行こうとすると、ラブは「ク〜ン、ク〜ン」と鼻を鳴らす。私は首輪を持ち着いておいでと促すと、暫
く躊躇していたが、恐る恐る一歩を廊下に乗せた私が更に引くと、後は抵抗なくついて来た。ミナミさんを見つけると尾っぽを振ってじゃれつく。
「ラブ!ここ!」