「ここに、あなた方ご夫妻の全ての個人情報が揃っています」
男は静かな物言いだ。
それだけに凄みを感じる
「奥様となら…三百万を回収出来る…奥様ソープに行きますか?」「嫌です。出来ません。…そんなこと!」私は叫んだ。
「話は最後までお聞き下さい。一本はラブホテル、二本目は車の中、三本目は野外。撮影を知るのはこの三人だけ。拒否されるのはご自由。個人情報を使うだけです」
「そ、そんな。女房にそんなことは…」夫は言葉に詰まっている。
こんなめちゃくちゃな話は通用する筈はなかった法的にも打つ手はいくらでもあった。子供でも判る話だ。…ただ、その時の私の精神状況は、この話があるなしに拘わらず、(子供も授からない、親とも断絶、商売もはかばかしくない、夫婦間もマンネリ気味、ましてやSexだって…)女としての悶々としたモヤが心に充満していた。…大学時代、マドンナと持て囃され、男に不自由したこともなかった…ことなどが思い出される33才の身であった。
三百万という金額は私のヘソクリを加えればどうにもならない金額ではなかった。(最終的には仕方ないか)その余裕も取り戻すことは出来ていた
「あなた、あなたはどうなの?私がこの方と、せ、Sexして…カメラを回せるの?三百万あるの?」
私は夫に詰め寄って見た
夫の実家、友人知人などのことは大体、掴んでいる「そ、そんな。か、考えて見る」「考えなきゃ判らないの?そんな事が」
「利息を入れれば四百五十万。私は三百万と言っています。一回のSexで百万。いや百五十万。ご主人…考えて下さい」
男は冷酷に言う。
その時、私の心がゾクッとしたのは何故だろうか
「四百五十万なんて、そ
そんな額が…何で…」夫はうろたえる。
「グレー金利を差し引いて法定金利 18%…どうぞ、計算なさって下さい」
男は計算機を夫に差し向ける…。その指も細く…長い…。
「今は…ど、どうにも…なり…ません」と夫。
「では、ご主人、いつなら?…一週間後は五百万。…今なら奥様の身体がここにあります」
(この男との三回のSexでチャラになるのだ)私は
むしろ、男の責めを小気味よく聞いていた。
「き、紀代美…何とかならないか、三百万」私の顔を見て夫が言う
「ご主人、お返し頂くなら四百五十万です。奥様とのSexでチャラです」
と男。「あのー、………仮面ってどんな…」