「奥様の方が解りが早いようですね」と男。
「いえ、誤解しないで下さい。…主人は考えると言っています。私も考えます。夫婦ですから。ただ…参考までに」と私
「紀代美…」頼りない夫
「あなた、考えて。…借りたものは返さねば…利息も。だけど私にはどうにもならない」涙ぐむ私
「ご参考になさるなら…どうぞ」男はポケットから写真を取り出して私に差し出す。見ると、ヌードの女性が横溝正史の映画に出てくるような無表情の白い仮面を着けたものや目元だけを隠したSMチックなものなどが写っていた。
私は素早く記憶に留め男に突き返した。
「奥様、今この店で所有権のある機材はいくらございますか?」男が聞く
「止めてください。それでは商売が…それにたいした物はありません。二束三文です」…(資産台帳の取得価格では八千万だから少なくとも七百万にはなる筈)…
私は心の中で 100%、この男とSexをすると決めていた。つける仮面も。
「あなた、考えて。銀行や前借り出来る所はないの?実家やお友達は?働いて返せる範囲で…ないの?商売を止めるのだけは嫌…他人の精で」私。
不可能と解っていることだけ主人に並べた。
主人がいくら考えても打開策がある筈がない。
主人の苦汁に満ちた顔だけがあった。
「どうしようもありませんね。ご主人、そんな顔をしないで下さい。被害者はこちらです。
解りました。三年間、名古屋のソープに身を沈めて頂きます奥様。奥様ならNo.1になれます。二年で済むかな」男は冷たい
「あなた、何とか言って。考えて!私に、そんな所に…行けって言うの」
「いや。紀代美…ソープなんかに…出来ないよ」
「じゃ、この方とSexを…しろと?…それをビデオにあなたが撮ると?…」
私は両手で顔を覆って鳴咽を漏らした。
「奥様、私は方法論を言っています。Sexをするにしても、泣きながらであったり、イヤイヤするのであれば絵になりません。恋人同士のSexのようにリアルな、正直なSexができますか?それが前提です。もちろん私のテクニックによるでしょうが」
「解り…ました。主人が…主人の…役に…立つなら…ただ名古屋だけは。あなた、私は家庭も…商売も…守りたい。…これを理由に…離婚など…考え…ないでね」「離婚なんて…言うもんか」と夫
「あり…がとう。あなた…私、やってみます」