「ご夫婦で一番お得でベストの選択だと思います。ご主人のための奥様の決断です。宜しいですね、そう言う事でご主人」
「すまん。紀代美。」
「あなたが…言うなら」
「念を押しますが、リアル性に欠けたり、芝居であったり、消極的なSexであれば取り直しですよ奥様。いいですね」と男
「…で、でも私…経験…ありません…役者…でもないです」と私。
「そこがいいんです。素人だから売れるんです。
普段どおり、イキ顔、腰の振り、声…リアルに出して貰えば。元マドンナの顔の表情が売りですがね。この作品は」
「それと…ご主人、奥様の秘密を守る為にご主人をカメラマンにする訳です。いい加減なカメラワークなら他のプロにしますが…どうですか」
「頑張って…やります」
「カメラはベットの両サイド、真上の天井に固定カメラを計3台、ハンドが1台準備出来ますか…
奥様。そうですね…通常だと…適当なセリフがありますが…奥様の場合…セリフは無しにします。自然に出る音、声を収録します。それと…リアル性を出すために、コンドームは使いません。今日からでもピルを服用して下さい。あ と はと…下着やグッズはこちらで準備します。何かご質問は?」男は一気に告げた
「あの−、…それで…いつ頃…」私は遠慮しながら聞いた。
「そうですね、奥様、生理はいつ頃ですか?」
と男が聞いて来た。
「先週…終わりました」
「解りました。一本目は来週水曜日に撮ります…同じ日に三本は私が持ちませんから。…男が替わった方がいいですか奥様…私だけで?」
「なるたけ、知られたくありません。出来れば…一人の方と……」と私。
「それと、野外でも撮りますが…電源の関係もありますから…友人の別荘を借ります。庭の枕木テラスや芝生の上で」……
私はこの一連のやり取りをハンカチを離さず、目に当てながら進めた。
「あの。気を悪くなさらないで…あの、撮影が終わった後…借用書を…返さない…なんて…こと」
私が言い終わらない内に「奥様、しっかりしていらっしゃる。いいでしょう。今までの会話はこのレコーダーに録音してます。お二人を信じます」
内ポケットから小型のレコーダーを取り出しテーブルの上に置いた。同時に鞄から透明のレターケースに挟まった借用書を取り出すと、ケースを定規代わりに当て借用書を対角線に引き裂いた。
「これ、成約の証です。
半分お返して。明日また出直します」…帰った