「なんだ。好きな奴いるのか…」
少し寂しそうな表情をして、うつ向く松本。
「先生?」
不思議そうに見つめる深華。顔をあげ、深華を見る松本。
「あーあ。うらやましいよ、そいつが」
「えっ?!」
「俺、入学式の時、一目見てからずっと気になってたんだよ、深華のこと。なんか純粋そうな子だなぁって。俺、人を見る目はあるからさ、お前はいい子だって思った。そしたらどんどん気になって…好きになった」
真剣な目で深華を見る松本。真っ赤になっている深華。
「そ…れ…」
「こんな短期間で簡単に人好きになってんじゃねーよって感じだけどさ、俺、そーゆー奴だから。すぐ好きになって、たまに騙される」
「え…同じだ。私もすぐホレちゃって、騙されたり、裏切られたり…あのね、先生。私の好きな人は先生だよ?」
泣きそうな顔で松本に告白する深華。それを聞いて少し赤くなる松本。
「え…そうなの?」
松本の問いに、黙ってうなずく深華。深華の目から涙がこぼれおちる。
「深華…」
深華を優しく抱きしめる松本。大きな体にすっぽりと埋まっている深華。すると、準備室のドアを誰かがノックした。
コンコン
びくっ!
すかさず離れる二人。
「は、はいっ」
ガラガラ
「おい松本」
「あ、なんだ杉浦か」
杉浦は、松本の友人だ。数学の教師をしている。
「廊下に声が漏れてたぞ」
「うそ!!杉浦、誰にも言わないでね」
「当たり前だろ。まぁ声が聞こえたから忠告に来ただけだし。静かに会話してろよ。じゃ!」
「サンキュー杉浦!」