「ごめんなさい!大丈夫ですか?お怪我は?!」
彼女は慌てふためいていた。声は涙声で…。
私は、痛くもない首をさすりながら…ゆっくり車を降りて、後ろに回って見た。損傷はない。
「ごめんなさい!警察に知らせなければ!し、主人にも来て貰います!病院へ…どこか近くの!」
二ヶ月程前から、このジムで見掛けるようになった女。…スラリと伸びてはいるが脂の乗った脚。
嫌みのないハイレグの水着…それを押し上げている恥骨…括れたウエスト
…ウエストからヒップにかけての肉。
「大丈夫です。車も傷んでないし。帰りに修理屋に放り込みます。たいした事、ありませんから。警察に連絡しますか?私はどちらでも。…警察で話したり、現場検証したり、病院のベットに寝込む程、暇じゃないんです。泳げば治ります」
私は言った。
女が見事なフォームでプールをクロールで往復する泳ぎ。…プレスに難はあるが、素人ではない!
大学時代に泳いだ私は泳ぎには自信がある。
見れば、一目で解った。
「奥さん、行きましょう、泳ぎましょう。勝負しますか?」
笑いながら私は助手席のバックを持ち歩きだした
「いえ、主人に叱られます!困ります。病院だけでも…」
「解りました奥さん、泳いだ後、ラウンジで美味しいコーヒーをご馳走して下さい。それで示談成立です。ハンコ、押します。さあ行きましょう」
………こうして私たちは知り合った。
受け付けカウンターに向かいながら私は、
「二ヶ月前から、私…奥さんのファンなんですよ
見事な泳ぎ。…とナイスバディです。一目で魅了されました」
私はずけずけと言った。
「じゃ、10分後、プールで会いましょう」
私は後ろ手を振ってロッカールームに入った。
プールサイドでスクラッチ、準備運動しながら
「ご主人をお呼びになる話しでしたが…仲のいいご夫婦なんですね。羨ましい…」
私が辺りに人目のない事を確認して、小声で話し掛けると女は、
「とんでもないです。仲がいいどころか…釣られたおサカナ!…だから私泳ぐの。釣られる前のように自由に…」
と、事故のことなど忘れたように…言った。