「奥さん、イメージ、解って貰えます?こうです。こう、こうして…」
貴子は何度かプールを往復した後、水から上がりゴーグルを外しながら私に言った。
「健さん、とお呼びして宜しいのかな?…一休みしません?テーブルで」
貴子はオレンジジュースとホットコーヒーを両手に持ちテーブルに着いた
「健さん、このジムでだけで…いいの、是非教えて下さい。コーチして頂けませんか?是非!」
タオルを額に押し付けながら貴子は言った。
「いえいえ。コーチなど出来ませんが…私、週二日、ここに来ます。その日で良ければ…気付いたところだけ…指摘するので宜しければ…」
私は内心ワクワクし、毎日でもコーチしたかったが迷惑を装って言った。
貴子は途端に、顔をほころばせて、
「構いません!それで結構です。助かります。嬉しい。私、頑張ります」
こうして、私は週二日、貴子と会えることとなった…。
貴子の泳ぎを見て基本的な宿題を貴子に与えた。相撲、バレー、野球など全てのスポーツに共通するのだが、股関節の柔軟性は最も必要な条件の一つだ! 全身の可動域を広め、ケガを防ぐ…。
「貴子さん、股関節が固いです。お風呂上がりやストレッチなどあらゆる場を利用して…股関節を柔らかくして下さい。好記録の出発点です。脚が…180度、開くように努力して見て下さい。徐々にですよ。絶対に無理はしないで下さいね。必ず記録が伸びます。無駄にはなりません。夫婦生活にも役立ちます、旦那さんも喜びますよ」
私は片目をつむって笑って見せた。
「えー、夫婦生活ですか…恥ずかしい!私申し上げたでしょ?釣られた魚…興味ないわ。…でも、記録が伸びるなら努力しますコーチ!」
「あはは、早速、『コーチ』ですか。素敵な美人の素直な弟子ですね。私もワクワクします。脚の可動域が広がります!少しずつ…ですよ。急激にやると女の部分が痛くなるかも」
しばらく考えた貴子はポッと頬を赤らめて、
「…もう。エッチなコーチ!赤くなります!」
私はすましてコーヒーを飲んだ…
「180度、開脚出来るようになったらお祝いです!きっと記録も伸びていますよその頃には…泳ぐ前に柔軟体操やりますよ。私、背中を押します」