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それでも僕は 7

ねこ  2009-08-18投稿
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「鈴…お前、マジで言ってんの?」

僕は真面目だ。
震える指先で気づいて。

「先輩が好きです。苦しいんです…僕は…」

腰に手を回したままの状態で、くるりと先輩は向き直った。

僕は恥ずかしくて顔が見られないから、先輩の胸に頭を押し付けている。
眼鏡潰れそう。

「鈴!」

呼ばれても見れない。

先輩が、僕の頬に手を添えて…優しく仰がせる。

「泣くなよ、馬鹿」

切なそうな先輩の瞳。
女の子相手にするみたいに、僕の顎に指が伸びて…引き寄せる…。

唇が触れそう…。

でも、触れない。

先輩はしない。
僕は唇を噛んだ。
悲しそうな目を間近でみて僕のなかに木崎を探そうとしてるんだ。

「…ごめんな、鈴…俺は…俺が好きなのは…」

嫌だ!

僕は先輩に強く抱き締められた。

「…なんだ」

小さく呟かれた言葉。

優輝なんだ。

僕は弾かれたように先輩を突き飛ばして後ずさった。

「鈴…」

僕は両耳を塞いで叫んだ

聞きたくない、
聞きたくないっ

僕は逃げた。

先輩がなにか遠くで言っていたような気がするけど…僕には解らなかった

走って、
走って、走って


その時、リイチ先輩と廊下を歩くあいつ…転校生を見つけた。

幸せそうに笑いあって。

僕は真っ赤な目をして…
木崎優輝に掴みかかった

「な、なんだ…」

呆気にとられた転校生を壁に押し付ける。

泣きながら、僕は手を振り上げた。
こいつを殴ってやりたい

目の前が真っ赤になる。

でも…振り上げた手は、拳を握り締めたまま…下ろせなかった。

震える。
身体が震える。

倒れそうだ。

その時、ふわっと拳を包まれた。

振り返ると、悲しい、けどまっすぐなリイチ先輩の目があった。

「…殴っちゃ、ダメ」

思いがけない、優しくて可愛らしい口調に僕は吹き出した。
緊張が緩んで…ゲラゲラ笑って…それから泣いた

完全に変人だ。

僕は…壊れちゃったのかなあ…。



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