なんでこうなったんだろ
僕はリイチ先輩と木崎の部屋にいた。
亮二先輩はもう部屋を別に移してるから、いない…別の生徒がいる。
リイチがそいつに何か囁くと、席を外した。
僕はどうでも良かった。
誰に見られようが知ったことかよ。
「普通」でいることや、人間と関わらないことを望んできたのに…。
今の僕はなんだ。
なんなんだよ…。
木崎が僕を見つめている
怪訝そうだ。
なんだ、馬鹿みたいな顔しやがって…。
リイチ先輩が僕の正面に座った。
「はい、どうぞ」
労るように渡された冷たい缶コーヒー。
「有り難うございます」
小さく、呟いた。
「なあ…お前、一年だろ…俺、何かした?」
木崎のまごついた言葉に僕はまたカッとして、ベッドから立ち上がりかけた…時に、パンッと鋭い音が響いた。
「ってえ〜っ!!何だよ!」
唖然とした。
リイチ先輩が木崎の頭を思いっきり叩いたのだ。
それでいて、涼しい顔。
「馬鹿は黙ってて。…ねえ、大和君」
名札を見てニコッとする
リイチ先輩は人形みたいに綺麗な人だ。
「君、リョウが好きなんだね?」
僕の缶を握る両手に力が入って、凹んだのを感じた。
瞬間、木崎が体を堅くしたのがわかる。
「だから、桜…じゃなくて優輝が憎いんだ。ね、そうなんでしょ」
さらっと、普通の人なら聞きづらい話をする。
この人、相当変わってるみたいだ。
「…ごめん…俺…」
木崎の小さな声に顔をあげた。
謝ってんじゃねえよ、なんて柄じゃない台詞吐こうとして…のみこんだ。
木崎の目が、全部語っていたから。
そこには
罪悪感と、羞恥心と、後悔とがないまぜになっていた。
なにより、苦しみがあった。
そうか…。
苦しんでいたんだ。
このひとも、また。