「こちらこそ！宜しく！
あの…お名前は？あっ、下の名前だけでいいです…源氏名と言うか…偽名でも結構ですよ」
私はルームミラーを覗き込んで言った。
トンボのサングラスで人相は判らない！その時、私の携帯が鳴った。予約した男優からで、私は部屋番号を伝え部屋で待つように言い電話を切った
「……サエでよろしいですか？…ニズイにキバの冴です。……冴…です」
「冴さんですね？もう男優さん、ホテルでお待ちかねです！綺麗な人妻さんと伝えてたから…もう興奮しちゃって…」
私が言うと冴は、
「私…緊張して…躯が震えて…少し後悔してます…初めて…です…」
確かに震える声だった。
「大丈夫ですよ！子供じゃないから、大人の素敵なレディじゃないですか…腹を決めて！」
私が自信たっぷりの声で言うと、
「ハイ！そのつもりでしたが…やはり、緊張します！…遠いのですか？ここから…まだ…」
冴は落ち着かない様子で町並みを見ている。
「いえ、街のど真ん中です。ホテルオ〇〇ラのツインルームです。安心して下さい！」東京にある全国に展開している有名なホテルの名を言うと
「ラ、ラブホテルと言うか…そんな所ではないのですね？…少し安心…しました」冴はホッとした声だった
「当たり前ですよ！綺麗な人妻さんの濡れ場を撮るのにラブホテルはダメです！一流ホテルで綺麗な裸を撮らないと…失礼ですからね。…男優さんも、潮を吹かせる名人を呼んでますからね…潮、吹いたこと､あります？」私が真っ直ぐ前を見ながら言うと冴は、
「また…Ｋさん…緊張させないで下さい…私…益々緊張と言うか…もう」
私はエントランスをくぐり抜け奥の駐車場に車を停めた。
「冴さん、着きました」
私が言うと冴は車から降りて陽射しを除けるように額に手をかざしてついて来た。
目的の部屋をノックすると男優がドアを開ける…
「冴さん、こちらが男優の…」私が紹介しかけると冴は「Ｋさん、あの…仮面？マスク…貸して下さい」と私に言った。
私は男優と共に部屋に入りバックの中からマスクを取り出した。
電話での冴のイメージと妖しいカメラ映りを計算して、淫靡なな色使いの蝶が羽根を拡げた形のマスクを冴に渡した。
「ごめんなさい、直ぐに…これ、着けたら直ぐに部屋に伺います。ご挨拶しますので…」
ドアの前でサングラスのまま冴は言った。
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