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夜這い (二)

美菜子  2009-08-30投稿
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この、夜這いには伏線があった。
夫の三回忌が過ぎた頃、義父が
「美菜さん、すまんことだ!三回忌も済ませてくれて!あんたもまだ若い。寂しいことも判る…言いにくい事だが…ワシ達の事はもういい。十分やってくれた…いい人を見つけて、新しい生活を……」
と義父は言った、義母は何も言わずに俯いていた
「義父さん、そんな事を言わないで下さい!良くしてくれて…私こそ、感謝してます。寂しくなんかありませんよ。それとも…私が居ることで、迷惑でも…?」
私が言うと義父は黙って席を立った。
義父が心ないことを言ったのは判っていた。

残った義母が小さな声で言った。
「美菜さん、ありがとな!…けどな、三年も…寂しゅう無いって…嘘や!
女の気持ちは女しか判らん…昔から女は助け合って来たんじゃ、島じゃな…男ン宗に夜這いして貰うてな!誰も何も言やあせん!おかしい事でも何でもねえ!男ン衆も誰も何も喋りもせんしな!」
私は驚いて義母を見た。
「義母さん!…夜這いって!男の人が、あの、夜…部屋に?」
義母は人差し指を口に当ててシーッと音を出した
「女しか判らん!昔から励まして生きて来たんよ女同士。…黙って置きゃええ!…男ン衆に任せてな!…大きな声出しちゃいかんよ。慰めて貰ゃええ。男ン衆も名乗りゃせん、誰かも判らん!…美菜さんが好きな男ン衆がおるならおると、聞かせてくれりゃ早いけんど」
と言った。
確かに私も夫以外の男とセックスをしたことなど無かった。夫とは正月と盆には義父母に恥ずかしい位、声をあげたこともあった。義父母にしてみれば早く孫の顔を見たいとの思いがあっただろう……夫は松山の温泉に泊まり込みで旅行にも連れて行ってくれたが旅館ではなく連日、ラブホテルの梯子をしたものだった。狂おしい悦びも覚えていた。
「義母さん!好きな男なんて!…そりゃ健司さんとは…淋しいと言えば淋しい!でも、好きな男なんて…いません!」
私が言うと義母は、
「夫婦喧嘩しても構ゃせん!怪我してん病気してん仕方ない!…でもな、
美菜さん!寂しいのは我慢できんのよ!我慢ばっかしで生きちゃ行けんのよ、女はな。…男はいいさ!町に行けば女はいっぱいおる!…美菜さん、義父さんには、内緒じゃけんな!…ちょっと待てな」…義母は腰を上げて玄関に向かった。

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