義父は、健司が存命の頃、裏の漁具置場と僅かな広さの菜園を潰して、私達夫婦の居間と寝室を増築してくれていた。
居間に夫の仏壇を置き、廊下で母屋と行き来していた。
オシゲ婆さんは裏の鍵は掛けるなと言った。
チェックしてみる。
勤務の帰りに少し遠いドラッグストアーまで足を伸ばし「生徒の性教育用」と嘘を言い、コンドームを五ダース買った。オシゲ婆さんは、これは自前だと言ったのを思い出したから…。
最寄の日曜日には土佐清水のデパートまで出掛けシーツや布団カバーを買った。少しセクシーな下着、紐パンティやTバックも買って見たし、タオル生地の前ボタンの寝巻も買った。
昔からコンドームだけは安物を買う気になれない性格が出て、超薄型使用感なし新発売というのをひと箱買い、思わず苦笑した…。価格5000円。
喫茶コーナーでカプチーノを飲みながら…ここ最近のトキメキにも似たドキドキ感は何なのだろう…ああ、女の人生には男が必要なのだ…待てよ!話しをしたこともないし、好きか嫌いか判りもしない悟?洋平?…その男の精でこれ程トキメくとしたら、好きという感情は抜きにした単なるセックスに対してだけの期待?ドキドキなのか?…男なら誰にでも抱かれる私は単なる淫らな女か?
自問自答してみる……。
港でまたオシゲ婆さんに会うことを想定して、荷物は一つの袋に纏めて入れ、目立たないようにした。土産に外郎を買った
案の定、呼び止められた
「ミナ〜、美菜さん!日曜日に出掛けてたん?」
「ああ、オシゲさん!はいお土産!…今日は、学校の研修!土佐清水までね、出掛けてた!」
「うんうん、そうかい、そうかい!大変やね!ところで、近づいたな!悟と洋平には話し、しといたから!別々に話したもんだけん、自分だけが夜這いを掛けると思うて、二人とも喜んどった!美菜先生を抱けるンか ってな!うんうん。良かった良かった!他ん者は、だあ〜れも知りゃあせん…うんうん」
「もう、オシゲさんったらぁ…もう!」
私はイエスもノーも意思表示はせず、急ぎ足で立ち去るしかなかった。
まだ夕飯の支度には時間がある。…私は部屋の掃除を始めた。仏壇を掃除しながら亡き夫に問う
「健司さん、今度の金曜日、他の男に抱かれるかも知れない!ここで!死ぬからイケないのよ!見る?見たくない?私が抱かれるところ」