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夜這い (七)

美菜子  2009-08-31投稿
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金曜日の朝は、早く目覚めた。朝食の干物をあぶり、タマゴとノリを添える。母屋と健司、二基の仏壇に仏飯を上げる。
義父母に告げると何時ものように三人食卓に着く
義父はみそ汁に口をつけハア〜〜っと息を吐いた
それ以外は三人とも無言だった。。。。
片付けは義母の仕事だ。
義父は新聞を読んでいる
私が玄関を出る時、籐ミイが掛けられていた。
「行ってきま〜す!」
いつものように家を出た
山の急斜面を港まで、小さな小川が流れていて、僅か 10m程の土手に彼岸花が咲いていた。
その日、私は午後の授業の予定を見て早引けをして、実家の近くの美容室に寄った。
何時もの時間のフェリーには乗らず、「海上ハイヤー」に乗った。早く言えば大型のモーターボートだ。フェリーとは着岸場所が少し港の奥で、オシゲ婆さんのたまり場の前を通らずに家に帰れるからだった。
帰り道、私は土手の彼岸花を摘んで帰り、夫の仏前に活けた。
玄関の籐ミイは無かった

夕飯の支度に台所の冷蔵庫を開くと、大皿にヒラメの刺身が入っていた。
「爺さんが、イケスから上げて、自分で刺身を作ったんよ。何だかな…」
義母は何時ものように小声で囁く。
「へええ、義父さん、まだ腕は落ちてないわね…綺麗に出来て!美味しそう。私がヒラメ、好きなの、覚えててくれたのね…嬉しいわ!じゃ、やっぱり、ヒラメにはビールね。久しぶりにビール飲みましょうよ!義母さん、コップ、コップ!」
私がわざとはしゃいで嬉しそうに言うと、義父は
「うん、そうじゃな。この間、釣ったやつ、生かしといて良かったよ!美菜さん、喜んでくれて嬉しいわ乾杯、乾杯じゃ」
義父も私も飲んだ!
と言っても、私が缶ビールを三本、義父が五本程

「ああ、酔うた、酔うた…久しぶりじゃ!ワシゃ寝るぞ!もう風呂にも行けん!ほんじゃな!おやすみ!」
義父はヨタヨタとたち上がった…。
「義父さん…わたし…」
私は何かを義父に言わねばならない気がした。
義父は、後ろ手で手を振って寝室へと歩いて行った。後ろ姿に何も言えなかった。…………義母は
「美菜さん、後はワシの仕事じゃ、早う風呂に入って…準備もあろ?…ワシも早う、片付けて、寝るけんの…朝はゆっくりすりゃええ!朝飯ゃ要らんど!…可愛がっち、貰え!のう、我慢したご褒美、ご褒美!」と言った
私の頬を涙が伝った…。

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