12月。
冷たい風が吹き抜ける、
気温も例年より低いらしい。
スーツの上にコートを羽織、首にはマフラーを巻いているのにも関わらず、寒さは容赦なく体に入り込む。
「…さむっ。」
一人、誰の耳に入る事も無く呟いた。
はずだった。
「よかったら、
これ…どうぞ。」
スッと差し出された
小さなカイロ。
「…ありがとう。」
街角でティッシュを配っていた青年の耳に入ってしまっていた。
「それも下さい。」
人差し指をポケットティッシュに向ける。
「はい!ありがとうございます。」
柔らかな笑みを含みながら、冷たくなった手からポケットティッシュを受け取り
「冷たい…。」
ほぼ無意識に青年の手を包み込んだ。
「ぇ、あ…えっと…。」
青年の手から手を離し、
自分のマフラーを首から外す。
そして、未だ戸惑っている青年の首にソッと巻く。
「えっ!?そんな、駄目です…!」
「カイロのお礼。
じゃあ、またね。」
そう言い残し
足早にその場を去った。