「やっと会えましたね」女の肩越しに私が言うと
「そうですね!あっコーヒーでも如何ですか?お嫌い?…お紅茶でも…」
女が振り返って、初めて顔を見せた。
「うわ〜嬉しいですね!頂きます!コーヒーには目が無いんですよ。ブラックで!…日に 10杯は飲むんですよ」
私が言うと、女は嬉しそうにポットの蓋を捻った
ビニール袋からマグカップを取り出し、コクン コクン 音を立てて注いだ。
瞬間、車内に香りが漂った!…「んッ、コスタリカ?」私は思わず声を発していた。
「お詳しいですね!…はい、どうぞ!…熱いかも知れません!」
こぼさないように女は伸び上がって私にカップを差し出す。一口飲んで、
「美味い!」
私は言った。美味かった
女も自分のカップを一口すすって、
「シャンプーの香り。毎日、この時間に髪を?」
と言った。
「ええ、癖ですね!朝、最初の仕事はシャワーです。これから汗かいて、飯食って、もう一回!…それにしても、美味い…あっ、そうそう、これオーダー品!」
又、肩越しに紙袋を差し出した。女は受け取ると中を覗き、
「お手紙、拝見して?よろしいですか?」
と言った。
「どうぞ!読んで下さいその前に、コーヒー、もう一杯、頂けますか?」
私は二杯目を無言でゆっくり、味わった。
中南米、亜細亜モノを通じてもこのコーヒーが一番の好みだ。
5分近くも車内に沈黙が流れた…いや、私のコーヒーをすする音だけ!
「よろしいんですか?」
沈黙を破られて、ハッと女を見た。
「な、何が?ですか?」
思わず背筋を伸ばした。
「これ!頂いて?」
女の大きな目が私を見る
返事代わりにカップを差し出した。
「ほんとに、お好きなんですね、コーヒーが…まだお時間、よろしいんですか?」
女はカップを受け取ると
コクン コクン 音を立てた。
時計を見ると6時だった
「ええ、いつも、朝は時間ゆっくりです。10時に出社です!…大好きですコーヒー。私の精力のミナモトです!強いんですよ私…あっちの方も!」
コーヒーを注ぐ女の肩がピクンと動いた気がした
「……どうど!まだありますから。幾らでも」
カップを受け取りながら私はさりげなく言った。
「よしこさん、と読むんですか奥さん。互いにあんな出会いをした仲です!Hモードで行きましょうよ。気を使わず」