「単身…赴任を?そうですよね、お食事は。あの…どんな物がお好みですか?お食事は」
私を見つめながら女が尋ねてくる。
「うーん。これを揚げてツマミに、ビール飲んで…後は、和食ですね。味噌汁と漬け物があれば…今夜は、いいか…精力付け過ぎても…持て余しますしね…独り者は」
私はズケズケと言った。
「まあ!冗談を!…でも お味噌汁なら…このお豆腐が美味しいわ!」
女は私のワゴンの中に品物を入れて行く。
キュウリの漬け物、梅干し、ワカメ、昆布の佃煮、赤タマゴのパック、アジの開き…
私のワゴンは要領よく食材で埋まって行く。後からワゴンを押しながら、
「何だか、女房と買い物してるようです。助かります!」私が言うと女は更に顔を赤らめた。
「そんな!私、恥ずかしいわ。ご迷惑?ですよね…私は…ただ…」
と戸惑うように言った。
「迷惑なんて!とんでもないです!ホント、助かります!お願いします」
と言うと、
「私、お節介でしたね!ごめんなさいね!人ごとに思えず…あと、お野菜も採って下さいね」
野菜コーナーに歩いた。
セロリやレタス、刻んだキャベツ袋などを選んでくれた…。
「私は、キュウリや茄子の一夜漬けが好きなんです!…パリパリした歯ざわりが好きで!」
と言うと女は
「あっ、それでしたら…」と言って後戻り
「これ!これ美味しいです!簡単に作れて…」
と言って(浅漬けの元)と印刷されたビニール袋を持って来てくれた。
「これを?どうやるんですか?浸しておけば?良いんですね?」
私が言うと女は、棚にあった茄子を手に取って両手の手の平で挟んで
「塩をつけて、こうして揉むんです。…しんなりしてきたら、いいです。そのまま漬けて置けば…朝には食べれます」
真面目に説明してくれた
「太い方がいいですかね?茄子も、キュウリも…ゴウヤはダメですか?」
私が言うと、
「私は、中くらいが、好きです。ゴウヤは…」
と言いかけて、一瞬私の顔を見て、
「なんか、妖しい!ですね、…その言い方!」
と、又、顔を赤らめてよそを向いた。
「これくらい?のでいいですか?」私が言うと、
女はチラッと横目で見てうんうんと頷いた……。
「そうか。この太さが…お好きなんですね…」
私が言うと女は優しく肩をぶつけてきて…もう!…と囁いた。