「それじゃあ坪内さんは元気そうだったのね」
利葉は病院の屋上のベンチでこうして長政と語らうのが好きだった。
「盗撮の犯人も自分だって自白したそうです。そのあと、あの事件をネタに先生を脅す計画も思いついて、校長先生と協力したって…」
「あ〜あ…私って踏んだり蹴ったりね。フフフ、ウソよ。…兄がしたことは絶対に許されない事。私を恨む気持ちも分かるわ」
「先生、それでも、それでもヒカリと吉城は間違っていたと思います」
まるで英語の授業で間違っていない答えを恐る恐る発言するように長政は言った。
この言葉に利葉は少し間をおき、長政を撫でながら言った。
「そうね、先生もそう思う。私って踏んだり蹴ったりよ。あなたが坪内さんにとられてなければ、きっと私から告白してたもの。」
「先生?」
「村井くん……少しだけ、私を抱いて…」
利葉の髪はとても甘い香りがした。
「先生……俺、時々、先生が分からなくなります」
「……寂しがり屋なだけよ」
利葉は翌年、長政たちの卒業を見届けぬまま他校へ異動となった。
長政は今でも、あの高校で起きたことを思い出している。