♪ピン・ポン！♪ピン・ポン・・
ドアホーンが鳴り続く。
時計の針は夜中12:20分。ご主人さまのお帰りだ！
華の金曜日とか言って又飲んだのだろう！
私はネグリジェの上にカーディガンを羽織り、ベットから抜け出た。
玄関ドアの向こうで、酔っ払った主人が誰かと話す声が聞こえる…。
私はロックとチェンを外して後すざる。
「おう、おぅ！入れ！上がれ上がれ！…一杯やってけ！、美菜子、ビール！ビールだ！」
今夜も木村君と芳本君に両脇を支えられて主人が帰って来た。
「上がれ！おっ、コーヒーか？何でもいい！上がれ！何でも飲んでけ！」
主人はそう言いながらトイレに入った。
「いつも済みませんね！ご迷惑お掛けして！さあ、お上がりになって！どうぞ、主人から叱られます！おビールでも」
トイレから戻った主人は座卓の前であぐらをかいてネクタイを無造作に外した。二人はその両脇に座った。
「何にする？ビールか」
「いえ、もう私たちは。飲めませんから…」
「明日は休みじゃないか、ゆっくりして行け！」
「じゃ、せっかくですから私達はコーヒーを！頂きます」
「えー？お二人共コーヒーで宜しいの？…あなたは何にする？」
「俺は、そうだな、ウイスキーを一杯！」
私は豆を挽きながら、主人にグラスとボトルを差し出した。
お湯を沸かし、コーヒーをセットし、座卓に運んだ時には主人は、両手を拡げ仰向けでイビキをかいていた。
「ホントに行儀が悪いんだから！もう！…ごめんなさいね。こうなったら朝までこのまま！火事でも起きないわ。……さあどうぞ。味は保証出来ませんよ！豆はいい筈！」
私は二人の前にコーヒーカップを奨めた。
私も口をつけてみた。
「ああ！いい香りですね美味しいです。酔いが醒めます！香りもいい！」
二人は言った。
私たちの会話も聞こえない程、主人のイビキが高い！私は座敷の箪笥から毛布を持って来て、
「ごめんなさい！お願いしていいかしら。主人をソファに乗せて頂けません？うるさくて…コーヒーも美味しくないわ」
二人は軽々と主人を壁際の長ソファに横たえた。
「静かになったわ！まだコーヒーありますよ」
[4619] 
[0] 
[1]
