私はウイスキーのコップを空にした。主人を窺うと壁際のソファで、口をポカンと開けて、規則正しくイビキをかいていた。二人は一人掛けのソファを後ろに引いた。
「奥様、どうぞ!あっ、その前に、タオルを一枚貸して下さい」
私が取ってきたタオルを渡すと芳本君はソファに掛けるように言った。
「えー、私こんなのでいいかしら、着替えてきましょうか?」「いえ、そのままで構いませんよ」
私はネグリジェ風の上にカーディガン姿だった。
その上、ベットから抜け出たばかりで、当然、ブラジャーは付けてないのは少し気にはなったが、カーディガンのボタンはきちんと止めた。
芳本君はソファの後ろから私の肩にタオルを拡げてマッサージを始めた
「凄くソフトで、お上手。芳本君、どこで覚えたの?マッサージ!」
私が話しかけると、
「大学まで柔道をやりましたから、整体師の資格も持っています。…先輩の肩を4時間、揉まされたことがありましたよ」
私は後で知ったのだが、女性の、鎖骨の先端と乳首を結んだ斜め線上に、「乳腺」というものが走っているらしい。
芳本君は左右対象にマッサージを丁寧に繰り返した…耳の後ろから始めてうなじ、肩をマッサージしながら、長い指が鎖骨から肩先、乳腺の辺りまでさりげなく触るのだった。乳腺は女性の性感帯であることも後から知ったのだが…つい、うっとりしてしまう・・・
足元に座った木村君が、
「奥様、部長はいつも…こうですか?眠ったら目が醒めないんですか?」
主人を振り返って尋ねる
「起きない!絶対に目を醒ますことはないわ!さっきおトイレも済ませたようだから…朝、新聞が来るまでは起きないわ」
ふくらはぎからアキレス腱までを丹念にマッサージを続けながら
「熟睡派なんですね!それで会社では、精力的に動けるんだな…」
独り言のように呟く。
「ああ、何だか…興奮するなあ。奥様の足、柔らかい!芳本、お前は?」
「う−ん、柔らかいというより、筋肉がまだまだ若い感じですよね」
「うふふ、マッサージしてて、興奮してどうするの、木村君って、おかしいわよ!でも、凄く気持ちがいい!これなら整体院がすぐに開けるわ。……………木村君も上手」
「俺は、足が専門です。サッカーやってましたから、芳本じゃないけど…先輩の足をどれほどマッサージさせられたか!汚い毛だらけの脚を!奥様のような脚なら、舐めたいくらいです」