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それでも僕は 10

ねこ  2009-09-23投稿
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「先輩…あの…」

「鈴、お前って意外と読めないよ」

…それって誉めてるの?
でも、あんまし考えらんないや、あったかいから

「鈴、キスしてごめん。なんかさ、お前が屋上こなくなって…避けられてさ…自分でもよくわかんないんだけど、めちゃくちゃ痛かった」

…うん。
先輩は寂しがりやだもんね、と心で呟く。

「お前の気持ち、誤魔化したりしない。
今すぐ、他の奴に向かえるほど俺は器用じゃない…けど、失うのも痛い。…俺って卑怯だろ」

「うん」

先輩は笑って、あっさり言うなよ、と僕のおでこを指で弾いた。

「それでも、いいか?」

よくはないよ。
僕は本気で好きだから、本当は痛いよ。
先輩が好きだ。
だから、辛くても傍にいるから。

「それでも…いい」

「眼鏡、痛くないか?」

痛くない…。

僕は先輩の体温に包まれていた。
リイチ先輩、貴方の言っていた「誰か」に、僕はなれそうですか…?


大好きだよ、先輩。
好きで、好きで、仕方ないんだよ。

気が狂うほど、好きだよ
こうしていると欲張りになりそうで怖いよ。

好きになって欲しいって

思っちゃいけないのに。

泣いちゃだめだ。


僕は先輩を見上げて、微笑んだ。
精一杯、できることをするよ。

優しい先輩、優しすぎるから…誰をも傷つけまいとするから、自分が傷つくんだよ。



それから僕らは、

元通り。


屋上に上がって、放課後を過ごした。

先輩の好きな音楽を知った。

先輩の好きな食べ物や嫌いな食べ物を知った。

先輩の初恋も、知った。

両親が早くに事故で亡くなって叔母に育てられたことも知った…。

「だからさ、俺、すっごい資産家なの」

ふざけ半分で煙草の煙を吐き出す。

「俺が二十歳になったら遺産が全部手に入るんだってサ。叔母がそれでやっていけって。
二十歳になったら天涯孤独だと思ってやっていけってさ…気楽だよな」


先輩の悲しみも、知った


僕らは黙って背中合わせ

お互いの暖かさを感じながら、眠ることを知った


ねえ、先輩。
僕、誤算だったよ。

知ることは、先輩がどんどん僕の中に入ってくることだったんだね。

だから、痛いし
嬉しいし

恋は、愛に変わってしまうんだね。

求めないって言ったのに…僕は求めてる。

先輩、愛してる。



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